コラム from Sweden
北欧の暮らし

ハウスメーカー【スウェーデンハウス】がお届けする、
時季折々の北欧のコラム。

第74回
おうちカフェのlagomな楽しみ方

スウェーデンでは、毎年4月最後の、春の訪れを大焚火で祝うお祭りの日「Valborg(ヴァルボォリ)」が過ぎると、本格的な春がやって来ると言われ、5月は日毎に長くなる日照時間と共に、草木が一気に生い茂ります。

そうなると、外に繰り出したくなる衝動にかられるのが自然の心理。ですが、今年はそうはいきません。。。
スウェーデンの新型コロナウィルス対策は、北欧の他国とも異なり、厳しい外出規制や、強制的な閉店は要求されていません。行動の責任は個人に任せるという政府の方針は、スウェーデンらしいとも言えます。
そんな中、常に外で過ごすのが好きなスウェーデンの人々は、普段より少し距離をとりながらも公園や自然の中でピクニックをしたり、普通の生活を維持しているように見えます。
残念なことに自然が身近にない地域や人口の多い日本では、なかなか同じようにはできません。

それなら、おうちでガーデンカフェを装って、ちょっとした変化を楽しんでみませんか。
お庭があるおうちなら、お庭にテーブルと椅子をセットしましょう。ガーデンセットがなくても、ピクニックシートを敷いて、普段使っている椅子とブランケットを外に持ち出してみましょう。集合住宅なら、いつもは洗濯物を干すベランダに、鉢植えを吊り下げてミニテーブルやスツールを置いてみましょう。

道端に咲いている草花を無造作にコップにさすのもお勧め。お花があるだけで、心がほっこりするものです。春色のブランケットや布を敷いたり、お気に入りのトレイを持ち出してfikaなんていうのも、気分が盛り上がりそうですね。
例えば、お天気の良い日には少し早い夕食も外のテーブルで済ませてみませんか。
パンとスープだけのシンプルな食事も、いつもと少しだけ違う環境で十分楽しめます。
出来る範囲で頑張りすぎない、これがスウェーデン流「lagom(ラゴム)」な楽しみ方です。

■フィーカのお菓子をお取り寄せ出来るショップのご紹介
Lilla Katten/リッラ・カッテン(神奈川県逗子市)
https://lillakatten.com/

Fika fabriken/フィーカファブリーケン(東京都世田谷区)
https://fikafabriken.jp/

食のトレンドの行方は?

山菜料理は日本の春の楽しみのひとつでもありますね。昔は、スウェーデンでも野山に育つ草や木の芽を食べる習慣がありましたが、今では、春先にあちこちで繁る雑草の一種「bränneslla (ブレンネスラ)(和名:セイヨウイラクサ)」をスープやパスタのソースにする程度になっています。
ところがここ数年、和牛「Wagyu」やミシュランの星を獲得したレストランなどに見る、「北欧モダン料理」の人気がある一方で、自然の素材を使った素朴な料理も見直されてきているようです。
この変化は、私がスウェーデンで参加したワークショップでも感じました。
数年前から気になっていた、野草研究家 Lisenさんが主催する「雑草を食べよう!」というワークショップでは、
ストックホルムのユールゴーデン島にある、ローゼンダール城の庭を散歩しながら、庭の草を味見して、名前や調理法を教わります。
参加者は回を重ねるごとに多くなっているそうですから、食材としての雑草や野生の植物への興味が増していることが伺えます。

そしてもうひとつ、スウェーデン政府観光局が、2019年に「エディブル・カントリー」という興味深いキャンペーンを始めました。
スウェーデンでは、国土のわずか3%を占める住居地を除く97%が、ルールを守ればだれもが自由に立ち入ることができる土地になっています。そこではベリーやきのこを採ったり、キャンプをして自然を楽しむ権利「Allemansrätten (自然享受権)アッレマンスレッテン」が認められています。「エディブル・カントリー」はこの素晴らしい権利を利用した企画で、食材となる自然の恵みを自分たちで収穫し、自分たちで調理して食べるという、「DIYレストラン」の企画です。スウェーデン国内の23箇所に指定されたフィールドには、大自然の中にテーブルがセッティングされ、簡単な調理台や調理器具が用意されています。ミシュランの星を獲得したシェフの中から、自然食材にこだわる4名のシェフが選ばれ、彼らによるメニューとレシピも準備されているそうです。必要であれば現地の案内人の指導を受けることもできるので、アウトドアや料理の初心者でも心配はいりません。
自然と上手に共存しているスウェーデンの人たちのライフスタイルからは、まだまだ沢山のヒントが得られそうです。

残念ながら、現在は利用ができない状況です。新型コロナウィルスが終息した時には、ぜひ体験してみたいDIYレストランですね。

■「The Edible Country」紹介の動画リンク
https://youtu.be/RFbYtofyeuI
https://youtu.be/quCS8gHi7Yg
https://youtu.be/6i9Vb10g6EA

Fikaの小道具 もう一つの老舗窯 「Rörstrand(ロールストランド)」

Marianne Westman の代表作 MonAmi(モナミ)のシリーズ

コーヒーと甘いお菓子でくつろぐスウェーデンの大切な習慣「Fika」は、1950年代に急速に広まり、それに伴って必要な食器類が大量に生産されることになりました。
その頃に作られた多くの食器は、今もビンテージとして世界中のファンの間で人気が衰えません。
すでにみなさんもご存知の、Gustavsberg(グスタフスベリ)とRörstrand(ロールストランド)は、スウェーデンの2大陶器メーカーです。
そのうちのひとつ、ロールストランドは1726年にストックホルム城で始まったスウェーデン最古の王室御用達の窯として、ヨーロッパでも1709年創業のマイセンに次いで歴史がある窯と言われています。
後に陶器工場は、ストックホルムからヨーテボリ、さらにリーンショーッピングへと移転し拡大していきましたが、残念なことに2005年にフィンランドのFiskars(フィスカース)社に買収されてしまいました。
現在はスウェーデン企業ではなくなってしまったものの、ブランド名「Rörstrand(ロールストランド)」はそのまま残されています。

日本でおなじみのグスタフスベリのデザイナー「スティグ・リンドベリ」と並び、スウェーデンにおける陶器の最盛期1950年代に最も活躍したデザイナーのひとり「Marianne Westman(マリアンヌ・ウェストマン)」は、ロールストランドを代表するデザイナーで、「陶器の母」と呼ばれました。ユニークで遊び心のある彼女の代表作「Picknick(ピクニック)」は、ビンテージの中でも特に人気のあるシリーズです。もうひとつの代表作「Mon Ami(モナミ)」は、「Ostindia(オストインデア)1932年~」や 「Swedish Grace(スウェディッシュ・グレース)(1930年~)」のクラッシックラインとともに、現在もロールストランドのロングセラー商品として生産されています。

■グスタフスベリの記事のリンク
https://mjuk.swedenhouse.co.jp/column/life_1905/

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by Sweden House
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スウェーデンハウス公式サイト

見瀬理恵子(イラストレーター&フードアドバイサー)
ライター:見瀬理恵子(イラストレーター)
大阪総合デザイナー学院ファッションデザイン科卒。ペーター佐藤、安西水丸、原田治、新谷雅弘氏に師事。デザイン事務所勤務を経て、フリーランス・イラストレーターとして仕事を始める。1995年ー2000年と2006年から7年間スウェーデンに在住し、娘二人の成人を期に2013年9月に帰国。