コラム from Sweden
北欧の暮らし

ハウスメーカー【スウェーデンハウス】がお届けする、
時季折々の北欧のコラム。

第80回
レトロトラムとCafévagnen(カフェーヴァグネン)/ カフェトラム


日本の大都市ではほとんどみられなくなったトラム(路面電車)ですが、ヨーロッパでは多くの都市で走っており、スウェーデンの大都市、ストックホルムとヨーテボリ、リーンショーピングでも重要な交通手段のひとつとして活躍しています。
ストックホルムには3本の路線があり、そのどれもが移動手段として利用するだけではもったいないほど、美しい景色の中を走ります。
中でも、Djulgårdslinjen(ユールゴージュリニエン)と呼ばれる路線の眺めは最高です。街の中心地セルゲル広場を出発してから、まず右手にバルト海の内海に停泊している船を眺めることができます。さらに左手に王立ドラマ劇場や高級アパートメントが立ち並ぶ「Strandvägen(ストランドヴェーゲン)海岸通り」を走り、緑豊かなユールゴーデン島に入っていきます。そして北方民俗博物館や野外博物館「SKANSEN(スカンセン)」、「ABBAミュージアム」、遊園地「グローナルンド」を通り、「ローゼンダール城」の庭園、ヴァルデマール美術館まで、観光スポットを回りながら走る特別な路線といえるでしょう。


ユールゴージュリニエンには、レトロ車両で昔のコースを走る別の路線もあり、
その中には「Cafévagnen(カフェーヴァグネン)/カフェトラム」という名前のついたカフェ付きのビンテージ車両が運行されています。
もちろん、この車両には普通に乗降できますが、どこにも降りずに野外博物館SKANSENで折り返し、始点まで循環することもできるという、ユニークなトラムです。
綺麗な景色を眺めながらフィーカを楽しむ1時間足らずのショートトリップは、緑が生茂る夏や紅葉の秋にはリラクゼーションに最適。
このカフェトラムはタイムテーブルがなく、1時間に1~2本程度週末のみ運行されており、中ではコーヒー、紅茶、チョコレートドリンクや焼き立てのパンでフィーカを楽しむことができます。
路面電車には150年という歴史があり、それぞれの時代の車両が文化遺産として大事に保管されています。そして、車両が走っていた当時を体験してもらいたいという思いから、メンテナンスしながらそれらの車両が今も現役で運行しています。
さらに、驚くことに実際に運行しているだけでなく、文化遺産である全ての車両が貸し切り可能なのです!
思い出のある年代や好きなデザインの車両を選んでネットで予約し、グループでゆっくりユールゴーデンを巡りながらフィーカの時間を楽しんだり、食事のケータリングサービスをたのんでお誕生日パーティーもできるのだそうです。
観光旅行の一つとして、とても贅沢で貴重な体験ができるおすすめコースです。

※残念ながら、カフェトラムは2020年12月現在、運行を中止していますが、2021年には再開する予定です。

Djulgårdslinjen(ユールゴージュリニエン)のHP
https://www.djurgardslinjen.se/en

IKEAとミートボール(SDGs IKEAの取り組みについて)


スウェーデンはSDGs(持続可能な開発目標)に積極的に取り組む国の一つとして、世界的に注目されています。
ストックホルム市内の南にあるハンマルビーショースタッドは、地域内でエネルギーを循環させるというストックホルム初のエコタウンとして開発され、すでに20年以上が経ちました。
近年スウェーデンでは、持続可能な社会を目指す動きがさらに加速しているようにみられ、10代の環境保護活動家「グレタ・トゥーンベリ」の活躍は世界に広がり、日本でも報道されているのでご存知の方も多いでしょう。
農薬や化学肥料に頼らない食品や加工方法を表すオーガニックは、スウェーデンの人たちにとって特別なものという意識からすでに普通のものになりつつあり、食に関してはベジタリアンよりもさらにストイックなヴィーガンへとライフスタイルを変更する人が年々増加しています。
こうした動きは食糧を提供する企業側にも求められ、先月、北欧家具メーカーIKEAの食品部門「IKEA Food」から、「プラントボール」という、肉を使わずに作られたミートボールが発表されました。この「プラントボール」には黄えんどう豆由来のタンパク質を主とし、オーツ麦やじゃがいも、玉ねぎ、林檎が使用されています。
ご存じの通り、IKEAは店舗内にあるレストランでスウェーデン料理が食べられるということでも有名で、レストラン目当てに訪れる人が少なくありません。中でもスウェーデンの家庭料理の代表「ミートボール」は、どこの国のIKEAレストランでも一番の人気商品で、なんと年間10億個も販売されているそうです。
IKEA Foodは、その一部を今後「プラントボール」に置き換え、環境保護に貢献しようという取り組みをしています。
その他、家具や小物でも海洋プラスチック(回収プラスチック)を使用した新コレクションを発表するなど、世界をリードする環境先進国スウェーデンの今後が楽しみです。

人気料理家レイチェル・クーがアレンジしたプラントボールのレシピが載っているサイト
https://www.ikea.com/jp/ja/new/a-plant-ball-for-meat-lovers-pub424f78b4?_ga=2.244518082.658557232.1603786051-1716622876.1597117487

Ska vi fika i Japan(スカ・ヴィ・フィーカ・イ・ヤーパン)?
日本でフィーカしませんか?


2016年にスウェーデンのコーヒー文化を紹介する書籍「fika(フィーカ)」を出版して以来、日本でもフィーカの習慣が浸透すればいいなという思いから、私はフィーカにまつわるワークショップやイベントを開催しています。
回を重ねるごとに、お会いする人たちから「フィーカ、知っています!」というお言葉をいただく機会が増えました。とはいえ、言葉は知っているけれど、どんなものかよくわからないという方もまだまだ少なくありません。
日本ではフィーカをどんなふうに楽しんでいる人がいて、どのように広がっているのでしょうか。
これまで、このコラムではフィーカの歴史やスウェーデンのフィーカをご紹介してきましたが、今日は日本のスウェーデンにゆかりのある企業や人を訪問し、日本でどのようにフィーカが楽しまれているのかについてご紹介したいと思います。

今回は、2019年から始まった、スウェーデンの食を世界に広めるキャンペーン「Try Swedish」を担当されている、在日スウェーデン大使館/ Business Sweden 商務官の辻さんとCarl(カール)さんのフィーカを訪ねてきました。

春以来リモートワークが続き、現在もなおオフィスに出勤するスタッフの数が少ない状況の中、この日出勤されていたスタッフ数人が集まり、さっそくフィーカが始まりました。
Business Swedenでは、以前から毎週金曜日にフィーカをする習慣があるそうです。
ここ数ヶ月は、自宅勤務のスタッフはオンラインで参加し、オフィス勤務のスタッフと一緒にハイブリットフィーカを楽しんでいるのだとか。
この日はアドベントも近くなっていたので、辻さんがジンジャークッキーを焼いてきてくださいました。
フィーカのお菓子は、特にルールを決めているわけではなく、時間がある人や作りたい人が作り、多忙な時期は市販のドーナツやクッキーなどを買ってくることもあるそうです。癒しの時間であるフィーカがストレスになってしまっては本末転倒ですからね。
そして、頭のスイッチを切り替える大事な時間でもあるので、仕事の話はしないというのがフィーカの掟。家族のことを話したり、週末の予定や週末にしたことなど、たわいない話で仲間同士が打ち解ける楽しい時間です。

カールさんに、フィーカの好きなお菓子を尋ねると、なんとこの日お土産にお持ちした「Saffranlängd(サフランレングド)」!!
※サフランレングド…サフラン入りの細長いパン
お二人にお気に入りのカフェを尋ねたところ、カールさんは「郊外や田舎にある昔ながらのコンディトリーが好きです」、辻さんはストックホルムの老舗カフェ「Vetkatten(ヴェーテカッテン)がお気に入り」とのことでした。
最後に、思い出に残るフィーカをお聞きしたところ、「ストックホルムで仕事をしていた頃、クリスマス休暇に入る直前に、同僚と一緒にした仕事納めのフィーカは、何よりリラックスした思い出がある」と、カールさん。
辻さんは、「ちょうどセムラの時期に出張で行ったスウェーデンで、どこへ行ってもセムラのフィーカに誘われ、本当にみんなこんなにセムラを食べるんだ…と、とても印象的だった」とのことでした。
スウェーデンでは、仕事の打ち合わせに来られたお客様をフィーカにお誘いする機会が多いのですが、日本ではコーヒーすら飲まない方が多く、さらにお菓子にまで手をつける方はとても少ないそうです。
まだまだ日本のビジネスシーンでは「フィーカでリラックス」とまではいかないようですね。
Try SwedishのHP
https://www.tryswedish.jp/

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by Sweden House
人と環境にやさしい住まい「スウェーデンハウス」。高い住宅性能を備えているからこそ叶えられる、快適で豊かな暮らしをご提供しています。

スウェーデンハウス公式サイト

見瀬理恵子(イラストレーター&フードアドバイサー)
ライター:見瀬理恵子(イラストレーター)
大阪総合デザイナー学院ファッションデザイン科卒。ペーター佐藤、安西水丸、原田治、新谷雅弘氏に師事。デザイン事務所勤務を経て、フリーランス・イラストレーターとして仕事を始める。1995年ー2000年と2006年から7年間スウェーデンに在住し、娘二人の成人を期に2013年9月に帰国。