コラム from Sweden
北欧の暮らし

ハウスメーカー【スウェーデンハウス】がお届けする、
時季折々の北欧のコラム。

第72回
フィーカの7種類の焼き菓子

フィーカの7種類の焼き菓子

スウェーデンのコーヒー文化は1700年代に始まり、1900年代に「fika(フィーカ)」という言葉が使われるようになったことをきっかけにして、国民に広く浸透していきます。その語源は、スウェーデン語でコーヒーを表す「カッフェ」という単語を「カッフィ」と発音する地方で、逆さ言葉を使うようになったのが始まりだと言われています。
第二次世界大戦が終わると、お菓子作りに使われるバターや砂糖、小麦粉などが安く手に入るようになったことから、専業主婦が多かった当時のスウェーデンで、お菓子作りが大流行して、フィーカの習慣が定着しました。その頃、友人をフィーカに誘う時は「7種類のお菓子でもてなす」という暗黙のルールがあり、それより少ないと「ケチ」といわれ、逆に多いと「見栄っ張り」だといわれたそうです。「7種類」という数が、どのように決まったのかは定かではありませんが、スウェーデン人は口を揃えてこう言います。「7種類というのは、多すぎず少なすぎず、lagom/ラゴム(ちょうど良い)数だから」と。
さて、7種類のお菓子でおもてなしするとなると、何を揃えるか考えるだけでも大変そうですね。そこで登場したのが、救世主のようなクックブック、その名も「7種類の焼き菓子”Sju sorters kakor(シュー・ソッテシュ・カーコル)”」です。
1945年に出版されたこの本には、一般公募で集まった8000ものレシピの中から、500のレシピが選ばれ、掲載されました。
その後も約10年ごとに改訂版が出版され、累計で380万部というベストセラーとなり、どこの家庭にも2~3冊はある「お菓子作りのバイブル」といわれています。
2015年の改訂版では、英語バージョンも出版され、「フィーカ文化」は世界中に広がりつつあるようです。

春のお菓子「セムラ」

春のお菓子「セムラ」

 

北欧の国々において、雪と氷に閉ざされた世界が少しずつ色づいてゆく春は、雪解けとともに人々の心もゆっくりと解けてゆく、特別な季節です。
ベーカリーのショーウィンドウに「semla(セムラ)」が並び始めると、スウェーデンの人たちは「春の訪れ」を実感します。最近では、クリスマスが終わるといち早くセムラを売り出す店もでてくるほど、春が待ちきれない人が大勢いるようです。

「セムラ」とは、中世のキリスト教の風習である断食に備えて食べていたご馳走のひとつで、カロリーの高いお菓子です。
本来は、復活祭前の断食をする前日の、「fettisdag(フェットティースダーグ)」と呼ばれる火曜日にだけ食べていたものですが、断食をする人がほとんどいなくなった現在も、セムラを食べる習慣だけが残り、クリスマスが終わった日から復活祭までの間にだけ食べられるお菓子になりました。

日本人にはシュークリームに見えてしまうのですが…、実はカルダモンの効いたパンにアーモンドペーストとホイップクリームをたっぷりと挟んだ「菓子パン」なんですよ。
セムラが食べられ始めた中世の頃は、アーモンドペーストも生クリームも挟んでいない丸く焼いた普通のパンを、ミルクを入れた鍋で温めて食べていたそうです。現在のようなセムラになったのは1930年頃からですが、今もセムラを深皿に入れて温かいミルクを注いで食べる「hetvägg(ヘートヴェッグ)」を好む人は少なくありません。

最近は普通のセムラでは物足りなくなったのか、ハンバーガーの形をしたものや、デニッシュの生地を使ったものなど、種類が増えてどんどん変化し、毎年新しいバリエーションのセムラが話題になっています。
この時期にスウェーデンを訪れて、いろいろなセムラを食べ比べる旅も楽しそうですね!
2020年のfettisdag(フェットティースダーグ)は、2月25日でした。

påsk(ポスク)の飾り

påsk(ポスク)の飾り

 

スウェーデンの復活祭(イースター)はpåsk(ポスク)といい、クリスマスやミッドサマーと並ぶ大きな行事の一つです。

クリスマスは赤い色で部屋中を飾るのに対し、ポスクは太陽や喜び、復活を表わす「黄色」がシンボルカラーとなります。
復活祭にはイースターバニーと呼ばれるうさぎをモチーフにした飾りが一般的ですが、スウェーデンでは「復活」を象徴する卵と、ニワトリやヒヨコをモチーフにした飾りが多くみられ、黄色い水仙の花が窓辺やテーブルに飾られます。ポスク休暇の前になると、保育園や学校では、子どもたちが顔や手に絵の具をつけながら卵の殻に絵を描き、出来上がった可愛い絵付け卵「påskägg(ポスクエッグ)」が各家庭で飾られます。

スウェーデン特有のポスクの飾りといえば、鮮やかな色に染めた羽をつけた白樺の枝の束「påskris(ポスクリース)」があります。この白樺の枝の束は、もともとは十字架に架けられたイエスの痛みを分かちあうため、互いに枝の束で叩きあったものだとか。そしてそれが後に羽や布をつけた飾りになったと言われています。
今では残っていませんが、1800年代のスウェーデンでは、なんとお父さんが束にした木の枝で家族を追いかけ回すという遊びが流行ったそうです。

かつては楽しい事はご法度で、断食をし、ポスク前の1週間を静かに過ごしたそうですが、時代が変わり、ポスクは春を待つ明るい行事へと変化していったようです。
春を先取りしたポスクの飾りは、部屋全体に明るさをもたらし、人を元気にするパワーに溢れています。
Glad påsk!!!
(「グラード・ポスク」とはスウェーデン語で「ハッピー・イースター」という意味です)

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by Sweden House
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見瀬理恵子(イラストレーター&フードアドバイサー)
ライター:見瀬理恵子(イラストレーター)
大阪総合デザイナー学院ファッションデザイン科卒。ペーター佐藤、安西水丸、原田治、新谷雅弘氏に師事。デザイン事務所勤務を経て、フリーランス・イラストレーターとして仕事を始める。1995年ー2000年と2006年から7年間スウェーデンに在住し、娘二人の成人を期に2013年9月に帰国。