コラム from Sweden
北欧の暮らし
ハウスメーカー【スウェーデンハウス】がお届けする、
時季折々の北欧のコラム。
スウェーデンでは1700年代に「Kaffehus(カッフェヒュース)」と言われるカフェが出現し、当時のストックホルムには50店ものカフェがあったそうです。しかしその頃は男性だけの社交の場で、女性はカフェには入れませんでした。そこで女性たちはコーヒーが手に入ると友人を呼んで家でコーヒーを楽しんでいたそうです。これが「Fika(フィーカ)」の前身と言われる「Kafferep(カッフェレープ)」で、1800年頃から始まり1930年代に大流行しました。「カッフェレープ」は女性たちがコーヒー片手に噂話をする井戸端会議のような機会だったようですが、その頃はコーヒーやお菓子よりも綺麗に編まれたレースのテーブルクロスや高価な食器を披露するテーブルセッティングのほうが重要だったとか。色のついたテーブルクロスにレースのテーブルクロスを重ねるのが、1930年代のトレンドだったようです。
「カッフェレープ」には細かいルールがいくつかありました。例えば、服装は正装と決められ、既婚者かそうでないか、また夫の社会的地位や経済状況で座る順番まで決められていたといいますから、リラックスして人と打ち解ける現在の「フィーカ」とは大きく違ったものだったのですね。
「カッフェレープ」ではお菓子を食べる順番も次のように決まっていました。
1 Vetebröd(ヴェーテブロード):シナモンロールなどの菓子パン
2 Ljus sockerkaka (ユース・ソッケルカーカ):普通の(色の薄い)シュガーケーキ
3 Mörk sockerkaka(モルク・ソッケルカーカ):チョコレートの(色の濃い)シュガーケーキ
4 Ljus, torr småkaka (ユース・トル・スモーカーカ):薄い色のクッキー
5 Mörk, torr småkaka(モルク・トル・スモーカーカ):チョコレート味のクッキー
6 Fylld småkaka(フィルド・スモーカーカ):ジャムなどを詰めたクッキー
7 Bakelse (バーケルセ):ミニケーキ(大抵の場合アーモンドペースト使用のもの)
*さらにデコレーションケーキが加わりますが、こちらは食べられる人のみ。
「カッフェレープ」の語源ははっきりしていませんが、手仕事をしながら(「レープ」は「繕い物をする」という意味)お茶や話を楽しんだからとも、お菓子を持ち寄ったから(「レパレーラ」は準備するという意味)とも言われています。
その後、「カッフェレープ」は結婚式やお葬式、洗礼式の集まりでおもてなしをする機会に変化し、さらに簡素化されて一般家庭に浸透していき、現在の「フィーカ」の習慣が確立しました。
静寂の中に響く除夜の鐘とは対照的に、大きな花火の打ち上げと人々の歓声とともに迎えるスウェーデンの新年。
数年間も暮らすと、1月13日まで飾られるクリスマスツリーの違和感や、騒がしすぎる年明けにもすっかり慣れてしまうものです。そして、スウェーデン風クリスマスと大晦日、日本風お正月という3つのイベントがごちゃ混ぜになった我が家では、毎年慌ただしい年末年始を送っています。
西洋では、ほとんどの行事は前日の夜にお祝いするのが一般的です。新年のお祝いもそれにもれず、スウェーデンでも、新年ではなく大晦日に大きなパーティーを開き、ご馳走を食べて新しい年を迎えます。
実は日本でも、本来おせち料理は「年迎え料理」と呼ばれ、大晦日の夜から元旦にかけて食べられていたといいますから、祝い方が異なるとは言え、思わぬ共通点に驚きますね。
さて、日本ではおせち料理は三日三晩食べるものとされていますが、さすがに3日目には飽きてしまう人がほとんどではないでしょうか。最近では、元旦の夜から鍋料理というご家庭も多いと聞きますが、おせちに飽きたら食べたい料理のランキングの1位は「ラーメン」2位は「カレー」なのだそうです。
ではスウェーデンのお正月には、どのような料理を食べるのでしょうか?
スウェーデンには「おせち料理」のような特別なお正月料理はありません。クリスマスに伝統的な料理をたくさんつくり、その後数日間はそれを食べて過ごします。そのせいか大晦日に集まる年越しパーティーでは、ロブスターや牛ヒレステーキなど少し豪華な食材を使ったご馳走を新たに作ってお祝いします。
深夜までお酒を飲んでお祝いをするため、元日は二日酔いやパーティーの疲れもあって、家でのんびりと過ごし、元日の夜は「テイクアウトのピザ」というのがお決まりです。
ラーメンやカレーは元々和食ではありませんが、日本風にアレンジされて、今では国民食として定着しているように、スウェーデンでも、本場イタリア人からは「別もの」と酷評される「スウェーデンのピザ」が、テイクアウトの王道となっています。
クリスマスやお正月料理を堪能した後は、異国の味をアレンジした国民食を求めるという、面白い共通点がここにもありました。