コラム from Sweden
北欧の暮らし
ハウスメーカー【スウェーデンハウス】がお届けする、
時季折々の北欧のコラム。
9月に入ると白夜も終わり、すっかり暗くなった夜空をみて、スウェーデン人はこれから迎える厳しい季節に臨む覚悟を決めます。
夏の終わりからあちこちで開かれるザリガニパーティーはもともと南部地方の習慣。同じ時期、北部ではザリガニの代わりに「シュールストレミング」を食べます。シュールストレミングとは、ニシンを内臓ごと塩漬けし、缶の中で発酵させたもの。「世界一臭い食べ物」という不名誉な称号を頂いた、その臭いとは…
ガスで膨らんだ缶を空ける時に異臭が飛び散るのを防ぐよう、ゴム手袋装着のうえ、必ず屋外の水を張ったバケツの中で開けるという掟がある程です。
Tunnbrod(トゥンブロード)という小麦粉で出来た薄い堅焼きパンの間に、茹でたじゃが芋と大きめのみじん切りにしたアーリーレッド(紫たまねぎ)、時にはトマトも一緒に挟んで頂きます。こうすると臭いも気にならず意外と美味しいのですよ。もちろんアルコール度数の高いじゃがいもの蒸留酒アクアビットがお伴です。
写真:シュールストレミングの缶
スウェーデンでも秋は収穫の時期。短い夏に育ったベリーやきのこ類は種類が多く、少しずつ時期をずらしながら市場に並びます。普段はほとんどが輸入に頼る果物も、この時期だけは国産の林檎や梨、そしてプラムが堂々と店先に並びます。中でも林檎はスウェーデン人にとって特別で、スウェーデン国内で育つ林檎の木は300種類にも上るそうです。8月から4月までの長い期間にわたり、様々な種類の林檎が収穫され店頭に並びます。女性の名前がついている林檎もあり、Ingrid Marie(イングリッド・マリー)という種類は特に人気があります。酸味と甘みのバランスが抜群で、私も大好きな林檎です。
どこの家の庭にも必ずといっていいほど林檎の木があるので、収穫のお裾分けをいただく事もよくあります。
スウェーデン北方民族博物館(Nordiska Museet/ノルディスカ・ムーゼーット)では林檎についての情報満載のアプリケーションが無料で配布されています。
http://www.nordiskamuseet.se/appelappen
http://appelappen.nordiskamuseet.se/start/#/tab/applen
写真:スウェーデンの林檎
スウェーデンのハンティング人口は30万人もいるそうです。そのうち5%は女性で、27万人がエリヤーガイと呼ばれるヘラジカハンターです。ハンティングと聞くと、少々野蛮なイメージが浮かびますが、実はスウェーデンの重要な産業「林業」を守るためでもあるのです。野生の動物が増えすぎて森を荒らさないよう調整するために、決められた時期に厳しいルールに従ったうえでハンティングが許されています。解禁日は国の中でも、気候と繁殖の時期によって異なり、北部地方では9月の第1月曜日、南部では10月の第2月曜日と決められています。ハンティングは常にグループで行動し、獲ったヘラジカの肉はグループ内で分け合います。無駄のないようすべてを使い、ソーセージ等の加工品にもします。食用に育てられた家畜に比べ、自然の中で淘汰された野生肉は栄養価が高く重宝されます。昔ながらの生活がこんな風に文化として残っているのです。
写真:大自然の中にいるヘラジカ
Lingon(リンゴン)は和名「コケモモ」でも知られており、ベリー類の中では比較的遅い時期の9月初旬から10月中旬まで収穫できます。スウェーデンを代表するワイルドベリーのひとつ、ブルーベリーと共に一番多く収穫されるベリーです。お馴染みスウェーデン風ミートボールには甘酸っぱいコケモモのジャムが必ず添えてあり、果汁は1年中ジュースにして飲めるよう、濃縮して保存するほど皆が大好きなベリーです。森の中の苔が生い茂る低い場所に宝石のような真っ赤な実が育ちます。大昔からこの酸っぱい実は、北欧の人たちにとっての貴重なビタミン源となっています。コケモモは-40℃の寒さにも耐えられるそうで、真冬でも緑の葉を付けたままです。その葉っぱは、12月のルシア祭で聖ルシアの頭に載せるロウソクを立てる冠の飾りにも使われます。
ミートボールについてはこちらもご覧ください。
https://mjuk.swedenhouse.co.jp/recipe/recipe_1406/
写真:森に生育するコケモモ