スウェーデンでは、1月半ばになるとベーカリーに季節の菓子パン「Semla(セムラ)」が並びはじめます。日本でも北欧好きの間では話題にのぼる機会が増えましたが、まだまだその見かけからシュークリームと間違えられる事の多い菓子パンです。
「セムラ」は、もともとキリスト教の古い習慣「断食」に備えて、栄養を蓄えるために食べていたもののひとつです。断食に入る前の3日間を「Fastlagen(ファストローゲン)」とよび、カロリーの高い食べものや普段は食べない贅沢な物を食べていました。
1日目の日曜日は、「flasksondag(フレスクソンダーグ)豚肉の日曜日」といって豚肉を食べ、2日目の月曜日は、教会で青い服(断食の色)を着ていたことから「bla mandag(ブローモンダーグ)青い月曜日」と呼ばれ、この日もご馳走を食べていました。そして3日目に当たる火曜日は「Fettisdag(フェットティースダーグ)脂肪の火曜日」または「vittisdag(ビートティースダーグ)白い火曜日」と呼ばれ、精製された白い小麦粉で出来たパンを食べていたそうです。「セムラ」の語源も当時なかなか手に入らなかった「白い小麦粉」からきています。
地方により多少は食べるものが違っていましたが、いずれにせよ高カロリーの食事で3日間を過ごしたのだとか。
1771年の「脂肪の火曜日」にあたる2月12日、当時の王アドルフ・フレデリークは「セムラ」を食べ過ぎて亡くなったとも言われていますから、食べ過ぎにはくれぐれも注意ですが…
この時期スウェーデンにお出かけの方は是非、「セムラ」をお試しくださいね!
写真:ベーカリーに並ぶセムラ
*2018年の「Fettisdag(脂肪の火曜日)」は2月13日でした。
通りの名前
スウェーデンには、ヨーロッパの他の国と同じように人の名前がついた通りや広場がたくさんあります。通りの名前は住所となり、番地は左右で偶数と奇数に振り分けられているので、知らない場所でも簡単にたどり着く事ができます。
日本では人の名前のついた通りをみかけたことがなく、そもそも通り自体に名前がついていないことが多いので住所はとても複雑ですね。
ところで、ストックホルムのメイン通りには、北欧神話に登場する神の名前がついているのをご存知ですか?
街の中心に当たる地域には主神である「Oden(オーデン)」の名がついた「Odenplan(オーデンプラン)」と「Odengatan(オーデンガータン)」があります。その息子「Tor(トール)」の名のついた「Torsgatan(トーシュガータン)」はセーデルマルムを横切る大きな通りです。オーデンの住む宮殿「Valhalla(ヴァルハラ)」の通り「Valhallav?gen(ヴァルハラヴェーゲン)」はエステルマルム地区を南北に走る大通りです。その他にも小さな通りですが、「愛の女神Freja(フレイア)」の通り「Frejgatan(フレイガータン)」もあります。
また、「Vasagatan(ヴァーサガータン)」のように王様の名前がついた通りや広場も数多くあり、歴史を垣間みるのも素敵ですが、個人的には「Appelviken(アッペルヴィーケン):リンゴ湾」や、「Midsommarkransen(ミッドソンマルクラーンセン):ミッドサマーの花輪」など、物語の街のような可愛い名前にも惹かれます。
写真:「ベルイマン広場」映画監督
過激なウィンタースポーツ 寒中水泳世界大会
2月は春が始まる月といわれますが、実際は1年で一番気温が下がる時期です。
スウェーデンでは日照時間が少しずつ長くなり、暗い冬から少しずつ春に近づいて来るのを実感する季節でもありますが、寒さからはまだまだ解放されません。
そんな寒い気候でもウィンタースポーツを楽しむのがスウェーデン人。スキーやスケート、アイスホッケー等のスポーツは勿論ですが、北部地方の街Skeleftea (シェレフテオ)では、氷が張った河に長方形に切り抜いたプールを作り水泳をするという、過激な「寒中水泳ワールドカップ」が話題となっています。
参加者は平泳ぎ、フリーススタイル、バタフライで25m、50m、100mを競い合います。
2013年に始まった当初、参加者はたったの数名だったそうですが、2017年は噂を聞きつけて21カ国、400人の参加者が集まりました。そして、2018年は更に増える見込みです。
考えてみれば気温が-20℃以下でも、氷の下の水は0℃以下にはならないので、温かいと感じるのかもしれませんね。
真夏の水温17℃の海に入るのにも躊躇する私には、到底チャレンジできませんが…勇気のある方は一度足を運んでみてはいかがでしょうか。
写真:氷が張った河をくり抜いて作った競泳プール Winter swimming 2015