コラム from Sweden
北欧の暮らし

ハウスメーカー【スウェーデンハウス】がお届けする、
時季折々の北欧のコラム。

第103回
「Kanelbulle/カネールブッレ」(シナモンロール)にまつわる話

発祥がスウェーデンと言われる「Kanelbulle/カネールブッレ」。
その始まりは1920年代で、本格的に普及したのは1950年代になってからのことです。
1999年にHembakningsrådet(ホームベーキング協会)が、10月4日を「Kanelbullens dag カネールブッレンスダーグ(カネールブッレの日)」と設定し、毎年「カネールブッレコンテスト」を開催しています。
「カネールブッレの日」には、人口1000万人のスウェーデンで、なんと7000万個のカネールブッレが消費されるというから、まさに国民的菓子パンですね。

今回は「カネールブッレ」にまつわるお話をイラストを交えてご紹介します。

Kanelbullens dag シナモンロールの日

10月4日の「Kanelbullens dag (カネールブッレの日)」は、家庭だけでなく、職場でもカネールブッレが振る舞われます。そして、その数はこの日消費される半分にも及ぶとか。フィーカの文化が浸透しているこの国ならではの習慣ですね。
家庭でフィーカのお菓子を焼くのが流行していた1950年代に比べると、現在は随分減って、一番人気のカネールブッレでさえも自家製は3割程度。ほとんどの人はベーカリーやスーパーで買うようです。
スウェーデンのシナモンロールの特徴は、生地に入っている爽やかな香りのカルダモンと、トッピングされているパールシュガーのカリカリした食感です。
このカルダモンやシナモンを使用したパンの始まりは、スパイスが高価だった時代に高級感を出すためだったとか。フィーカが人をもてなす機会だったということがうかがえます。

カネールブッレの日のfika

カネールブッレの特徴的な材料

左からシナモン、パールシュガー、カルダモン
シナモンロールの生地を伸ばす時に使用するめん棒(Kavel/カーヴェル)

シナモンの話

「カネールブッレ(シナモンロール)」に使われるスパイス「シナモン」は、紀元前から使われていた最も古いスパイスのひとつで、中国やインドでは5000年も前から使われていたそうです。
他のスパイス同様、主に薬として使用されていた他、香料としても使用されていました。
スウェーデンではシナモンのことをKanel(カネール)といい、1600年代にヨーロッパ大陸から入ってきました。ですが、当時高価なスパイスは貴族や王族などの特別な人たちのもので、一般の人の手には届きませんでした。
現在は年間375トンものシナモンが輸入されるほど一般的なスパイスとなり、スウェーデンでは特にクリスマスによく使用されます。
スパイス入りホットワインを筆頭に、ジンジャークッキーやケーキ、ミルク粥にかけたり、またヤンソンさんの誘惑というグラタン料理に欠かせないアンチョビの味付けにも使われています。
スウェーデンではカルダモンと並んで、とても馴染みのあるスパイスです。

スパイスポット

よく使われるスパイス「Kanel」用のスパイスポットは、ヴィンテージアイテムとしても人気があります。

kanel(シナモン)の種類

シナモンの種類は250種類もあるそうですが、現在流通しているシナモンは主に2種類で、左上の色が濃いタイプの「カッシアシナモン」(インドネシア、中国産)と、右上の色が薄く層がパイ生地のように重なったタイプの「セイロンシナモン」(スリランカ産)です。
セイロンシナモンは、「本物のシナモン」と言われますが、スウェーデンを含めヨーロッパで一般的に流通しているのは、香りも味も強いタイプの「カッシアシナモン」です。
下は、シナモンを使ったクリスマスの食べ物。ミルク粥(gröt)とジンジャークッキー(pepparkakor)。

シナモンロールとカネールブッレ

シナモンロールは、日本のベーカリーでも知名度の高い菓子パンです。
アメリカ風にアイシングしたものをはじめ、フィリングやトッピングでアレンジしたものが数多くみられます。
東京近辺では北欧のベーカリーが増え、おそらく他の地方でも同じように北欧のシナモンロールを楽しめる機会が増えたのではないでしょうか。

北欧諸国では国によって多少違いがあるものの、シナモンロールはやはり人気の高いお菓子。
デンマークではデニッシュ生地で作るものが多く、ノルウェーと共に呼び名も形もスウェーデンの「カネールブッレ」と似ています。
フィンランドのシナモンロールは成形の仕方が少し違っているのが特徴で、「Korvapuusti(コルバプースティ)」といって、「平手打ちされた耳」という意味だそうです。確かに意味を知るとそんな風にも見えますね。

カネールブッレの色々な形

中央:「knellängd(カネールレングド)」は切り分けて食べるタイプのもの
右上:「ストックホルムロール」と呼ばれるグルグル巻きスタイルはベーカリーでよくあるタイプ
右下:フィンランドのお馴染み「コルバプースティ」
左上:デンマークのデニッシュスタイルのシナモンロール
左中央:アイシングがかかったアメリカ風シナモンロール
左下:ねじりながら巻き上げるスタイルのシナモンロール

カネールブッレ味のお菓子やお酒

スウェーデンでは最近、昔は見かけなかったシナモンロール味のお菓子やお酒が増えていて、なんだか日本のような商品展開になっているのが面白いです。

左の袋入りは、シナモンロールに似た「gifflar(ギッフラル)」という昔からある有名なお菓子。
上の筒状に包装されたクッキー「Ballerina(バレリーナ)」はクラシックなお菓子で、最近増えたシナモンロール味バージョン。
右下はシナモンロールとミルク味のリキュール。
中央下は、BEN&JERRY´Sのシナモンロール入りアイスクリーム。

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by Sweden House
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見瀬理恵子(イラストレーター&フードアドバイサー)
見瀬理恵子(イラストレーター&フードアドバイサー)
奈良県出身。パレットクラブイラストスクール1期生。
デザイン事務所勤務を経てフリーランス・イラストレーターとして仕事を始める。
1995年より通算13年間スウェーデンに在住、2013年に帰国。
帰国後はスウェーデン料理のケータリング事業を始める。
Fika(スウェーデンのコーヒータイム)のワークショップをとおして北欧文化を発信中。
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