コラム from Sweden
北欧の暮らし
ハウスメーカー【スウェーデンハウス】がお届けする、
時季折々の北欧のコラム。
スウェーデンでは、毎年4月30日はかがり火を焚くValborg(ヴァルボォリ)の日。中世の頃ドイツから伝わったと言われており、ヨーロッパではキリスト教の聖人ヴァルプルギスにちなんで、「ヴァルプルギスの夜」と呼ばれています。
古くは、牛や豚などの家畜を野生の害獣や不思議な力から守るためにかがり火を焚きましたが、いまでは春の到来を祝う大切なお祭りのひとつ。ストックホルム、ウプサラなど各地の大都市で開催され、ストックホルムではスカンセン野外博物館やガムラスタンでも盛大に祝われますが、住んでいる集落ごとで開催されることもあります。
ストックホルム郊外の古民家が並ぶエリアStorängen(ストールエンゲン)では、この日までに、各自、庭で冬の間に折れた木々の枝や葉っぱ、ガーデニングで出たゴミなどを集め、うずたかく積み上げます。夕方少し薄暗くなってくると広場に集まり出す人々。聖歌隊も登場し、地元の消防団も見守る中、いよいよ点火。
最初は小さかった火が回り、全体が大きな炎に包まれると、火の迫力がせまってきます。
聖歌隊が春の到来を喜ぶ歌を披露するのも一般的なのだとか。中でも「Vintern rasat(冬は過ぎ去った)」は一番盛り上がる曲なのだそう。
知り合いを見つけて嬉しそうに話し込む人々の姿や、枝の先にマシュマロを刺して必死に焚火に近づく子ども達など、ローカル感満載なこのお祭り。
炎で照らされた人々の表情も、久しぶりに集う喜びで、なんだかとっても嬉しそうです。
2022年の春先に開催された北欧最大の園芸フェア「Nordiska Trädgårdar/北欧の庭」は、三年越しということもあり、たくさんの人で賑わいました。このフェアでは、種や球根や苗木、道具や温室が生産者から直接購入が出来るほか、お庭作りのヒントやアイデアをもらえる貴重な機会でもあります。
「フラワーラボ」と称したワークショップでは、「ダリア・ユリ・モンカタバミで寄せ植えをつくろう」や、「素敵なブーケの束ね方」など、人気のガーデナー達からすぐに実践したいTipsを直接教えてもらうことが出来ます。
また、専門家や園芸・食・デザイン・ライフスタイルなどのシーンで活躍するクリエイター達により、会場内の特設ステージにて開催される様々なセミナーも見どころの一つ。セミナーは「知識」と「インスピレーション」と2つのカテゴリーに分かれていて、「お庭やバルコニーでも楽しめる果樹とベリー種の紹介」や「ダリアの球根の分け方」といった実用的なノウハウから、歴史・文化、トレンド、お庭やグリーンにまつわるプロジェクトの紹介など、いろいろなアイデアやインスピレーションにあふれた内容が魅力的。4日間で5万人の来場者が訪れ、過去最高の売り上げだったブースも多かったのだとか。
私も、自宅の温室で試してみたいアイデアや、育ててみたい花や野菜の品種に出会ったり等、訪れる度に様々なインスピレーションをもらえるイベントです。
外にいるだけで気持ちの良い季節の到来を実感するこの時期、日々の生活の中でガーデニングを取り入れ、自然に寄り添った暮らしを楽しんでいきたいですね。
あっという間に通り過ぎていく、北欧の春。
スウェーデンで暮らしはじめて感動したことの一つに、春が終わり、初夏が訪れる頃の美しさがあります。
5月になり、やっと気温も少し暖かくなってきたなあと思っていると、木々はぐんぐんと芽吹きだし、世界がどんどん新緑の色に染まっていきます。美しい花々が咲きはじめると、初夏が突然にやってきます。空気はしっとりと瑞々しく、街を散歩していると若葉の匂いに混ざって、ライラックのふんわりと良い香り。
スウェーデンには、この時期ならではの美しさを描写する素敵な言い回しがあります。
昔、とある靴職人が工房の扉に「Stängt/mellan hägg och sylen/バードチェリーとライラックが咲いている間はお休みします」という看板を掲げたのだそう。先に白い花をつけるのはバードチェリー。そして続いてライラックの白やピンク、淡い紫色の房咲きの花が続きます。
この時期がいつ、どのくらいの長さでやってくるのかは、その年によっても異なりますが、短い時では2週間ほどのこともあるのだそう。この表現は、そんな一瞬で移りゆく季節の美しさを物語っています。