コラム from Sweden
北欧の暮らし

ハウスメーカー【スウェーデンハウス】がお届けする、
時季折々の北欧のコラム。

第93回
スウェーデンの住まいで見かける刺繍

スウェーデンの住まいには、必ずといっていいほど家族の思い出のスペースがあります。壁一面に、子どもの絵や祖父母から譲り受けた作品など、家族の思い出の品が飾られているなか、よく見かけるのは刺繍が施されたアイテムです。私の義母の家にも、義母の母や叔母が刺繍したというランナーや鍋つかみがあります。100年くらい前のスウェーデンでは、長い冬の間に家ですることといえば手仕事でした。そのため、今でもその時代の手編みのブランケットや刺繍の施されたリネンがたくさん残されています。

刺繍は、当時の人々にとって重要な役割を担っていました。例えば、刺繍を施した家庭用のリネンをどれだけ持っているかが、その家の経済力の基準であった時代もありました。ダーラナ地方のように民芸品が発達した地域では、結婚式などの重要なイベントの際には、刺繍の入ったミトンやブレスレットなどが婚約者同士の間でプレゼントとして交換されました。イニシャルが刺繍された家庭用リネンをお嫁入りの道具として娘に持たせた習慣もあったことから、今でもそのようなリネンがフリーマーケットなどで売られています。ハッランド刺繍、イェムトランド刺繍、ブレーキンゲ刺繍など、地方によって伝統的な柄やパターンを刺繍したものがあったり、有名なことわざが刺繍された作品もよく見かけます。温かみのある刺繍が施されたものが日常の暮らしのなかにあると、ホッとした気持ちになりますね。

ストックホルム市内の集合住宅に暮らすバルブロ・ベルリン/Barbro Berlinさんのご自宅1

今回はストックホルム市内の集合住宅に夫のウルフさんと暮らす、プロダクトデザイナーのバルブロ・ベルリン/Barbro Berlinさんです。
バルブロさんは、アムセルベルリンというデザインデュオを結成し、イケアなどのプロダクトデザインを手がけています。バルブロさんのご自宅は市庁舎にも近いクングスホルメン地区にあり、ストックホルム中央駅からもほど近い7階建ての集合住宅です。ストックホルムの集合住宅には、建物に囲まれたまるで隠れ家のような中庭があります。住民以外は中庭に入ることができないため、子どもたちだけで遊んでいても安心です。バルブロさんが暮らす集合住宅は1977年に建てられたもので、家族で12年前に引っ越してきました。

インテリアやスタイリングも手がけるバルブロさんは、自宅のインテリアも計画的に仕上げました。オープンスペースになるように壁やドアを取り外してリビングルームとキッチンをつなげたり、昔ながらのオーク材の床を、白くペイントされたフローリングに張り替えるなど、大規模なリノベーションを行っています。子どもたちが独立した4年前には、リサイクル素材が使われたイケアの黒いシステムキッチンに入れ替えました。基本的に室内は白が基調で、キッチンや家具の一部を黒にして、全体的に統一感のある空間にしています。クッションや植物、パネルや写真などで色彩を整えているので、インテリア小物を変えると雰囲気もガラッと変わりそうです。
アムセルベルリンのウェブサイト https://www.amsellberlin.se/

 

ストックホルム市内の集合住宅に暮らすバルブロ・ベルリン/Barbro Berlinさんのご自宅2

白が基調のシンプルなインテリアの中に飾られている小物には、ひとつひとつに特別なストーリーがあるということに、私は感銘を受けました。女の子ふたりが描かれた絵画や大きなダーラナホースは、夫のウルフさんが親族から譲り受けたもの。リビングルームやキッチンにある数々のパネルは、知人のグラフィックデザイナーやフォトグラファーから買い求めたり、譲られたものだそうです。ホールの天井にある2つのペンダントライトは、普通に買えば数万円するものを、お店の照明を総入れ替えするタイミングでかなり安く譲ってもらったのだとか。キッチンの椅子は今は存在しないブランドのものを格安で手に入れるなど、いいものを安く手に入れる術もご存知です。

バルブロさんのシンプルなインテリアの中でひときわ目を惹いたのは、キッチンのカラフルなステンドグラスの照明。伺ってみると、「これはティファニーランプという照明で、ニューヨークに行った時に一目惚れしたものなんです」とのこと。バルブロさんは、旅行に行くたびに思い出になる品を必ず購入されていて、この照明もニューヨークで見つけたものだそうです。シンプルでモダンなインテリアの中に、ステンドグラスの手作り感のある美しさが際立ち、なんて素敵なんだろうと、しばらくうっとりしてしまいました。
アムセルベルリンのウェブサイト https://www.amsellberlin.se/

 

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by Sweden House
人と環境にやさしい住まい「スウェーデンハウス」。高い住宅性能を備えているからこそ叶えられる、快適で豊かな暮らしをご提供しています。

スウェーデンハウス公式サイト

ブルセリド山本由香(デザインコンサルタント)
1998年からスウェーデンのストックホルムに暮らす。2002年に初の北欧デザイン情報サイト「スウェーデンスタイル・コム」を創設し、北欧デザインやライフスタイル情報を日本に紹介。現地デザイナーとのネットワークがあり、MUJIスウェーデンのプロジェクトに関わる等、日本と北欧の架け橋として活躍中。日本向けの北欧パターン事業Scandinavian Pattern Collectionの現地代理人を務める。