コラム from Sweden
北欧の暮らし

ハウスメーカー【スウェーデンハウス】がお届けする、
時季折々の北欧のコラム。

第91回
子ども服の店「Sewing for seeds」

ストックホルムの旧市街ガムラスタンにある、素敵な子ども服のお店「Sewing for seeds」をご紹介します。
大通りから一本離れた通りにあるこのお店には、天井まで続く大きなショーウィンドウがあり、服やおもちゃが自由にディスプレイされて、まるで舞台のよう。小さなおもちゃ箱のような可愛らしさに思わず足をとめてしまいます。
店内には赤ちゃんの首元を可愛く飾ってくれるつけ襟や、ふんわりとしたウールのニットに素朴な木のオブジェ。オーナーのガブリエラさんが旅先や見本市などでみつけたものが並び、まるで物語の中に迷い込んでしまったような世界が広がっています。

もともとは図書館員だったガブリエラさん。40歳で洋裁の学校に行き、7年ほど前にこの場所でお店をオープンさせました。4人の子供のママで、オープンした当時一番上の子は12歳。ガブリエラさん一家は同じ建物の最上階に住んでいて、たまたまこの路面の物件に空きが出たのだそう。当初は店の中にミシンがあり、自分でデザインし仕立てた服も販売していたのだとか。「小さな種たちのための縫い物」という屋号は、ロンドンに住むガブリエラさんの義理のお母様がつけてくれました。

「質が良く自然素材で出来ていて、触った時に心地よく丈夫なことはとっても大切。見かけは良いけど肌触りが良くないものもあるでしょう?」
無意識に影響は受けているかもしれないけれども、流行はあえて追わないようにしているそう。機能性もあり、心地よくて丈夫な子ども服を求める常連さんが多く、タイムレスなデザインのデンマークの子ども服「FUB」や、スウェーデンのサスペンダーのついたタイツ「Silly Silas」は人気のブランドなのだとか。
「私のお店の服は編んであるものやシンプルなアイテムも多いので、お客さんが『これ、自分でも作ってみようかしら!』と思うきっかけになったら嬉しいわ。いろいろな発見があり、お客さんにインスピレーションを感じてもらえるようなお店でありたいと思っているの」
ウェブショップの展開もないSewing for seedsは、知る人ぞ知るガムラスタンの名店です。
「Sewing for seeds」お店のサイト
https://sewingforseeds.se

スウェーデンのお花にまつわる素敵な慣わし

スウェーデンのお花にまつわる素敵な慣わしをご紹介します。
スウェーデンには「Fredagsbukett(金曜日のブーケ)」と呼ばれる習慣があります。一週間頑張ったご褒美として、週末を心地よく過ごすため、金曜日に自分のために花束を買う、というものです。2010年代の半ばにインフルエンサーがブログで取り上げてから、SNS等でハッシュタグとともに素敵なブーケの写真を投稿する人が増え、瞬く間に人々の間に広がって行きました。

ここ数年、特にコロナ禍において、この単語がよりライフスタイル系のコンセプトとして認知されてきているように思います。リモートワーク が一般的になるなか、多くのスウェーデン人が自宅を花で飾っていたそうで、スウェーデン大手花屋チェーンInterfloraでは2020年に切り花の売り上げが倍増したのだそう。
2019年のはじめに「金曜日のブーケ」に特化したお花屋さんを始めたフローリストのサンドラ・ブリッズさん。もともとはお隣さんから「毎週金曜日にお花を届けて欲しい」と頼まれ、ブーケを作り始めたことがきっかけでした。金曜の朝、市場に出かけ旬の花を仕入れてブーケを作り、近隣のエリアに自転車で届けます。

「Fredagsbukett(フレーダグスブケット)は金曜日を特別な日にしてくれる、とてもシンプルで素敵なコンセプトだと思うわ」と話すサンドラさん。当初、配達は自転車の荷台に収まる程度の量でしたが、コロナ禍でお客様が激増。環境への配慮から車での配送を避け、電動自転車で配達出来る50個に限定して注文を受けているそうです。さらに、定期購入という形をとることで、花を無駄にすることもなく、手ごろな価格でブーケを提供することが出来るのだそう。
ドライフラワーやエキゾチックな花を取り入れたブーケや、葉物でまとめたグリーンのブーケ、ハーブや野の花を取り混ぜたものなど、ブーケには様々なトレンドがあるそうです。
リモートワークが一般化した今、住まいを心地よい空間にすることや、平日と休日の区切りをつけることがより大切なものとなり、Fredagsbukettに再び注目が集まっています。
これは、花の持つ魅力と、暮らしを楽しむ心地良さが再発見されているせいなのかもしれません。2022年、コロナ禍だからこその良い変化にも目を向けていきたいですね。
「Bell & Bonn」お店のサイト
https://bellbonn.se

コロナ禍でのスウェーデンのアウトドア事情

コロナ禍でのスウェーデンのアウトドア事情をご紹介します。
自然の中に身を置くことは、リラックスや癒しの効果だけではなく、ストレスの軽減、認知力の向上や、メンタルヘルスの改善をもたらしてくれることが研究結果からも明らかになっています。ヨーテボリ大学の人文地理学の研究者であるアンドレアス・スクリーヴェル・ハンセン氏のアンケート調査によると、コロナ禍により約半数の人が自然に出かけていく習慣に変化があり、多くの人が自然に身を置くことが増えたと答えています。癒されるだけではなく、家族や友人と安心して過ごせる場所として、身近な自然がより大切な役割を果たしています。
スウェーデンを象徴する文化の一つである「フィーカ」も、コロナ禍で変化がありました。アンドレアス氏によると、多くの人がカフェでラテを注文するかわりに、持参したホットドッグとコーヒーを森の中で楽しむようになったのではないか、とのこと。

私自身、感染拡大している時期はスウェーデンのコロナ政策の一つである「人と会う時には屋外で」を実践していました。魔法瓶にコーヒーを入れて、友人家族と近くの公園や自然の中で気軽に会うのもいいし、焚火でソーセージを焼き、パンに挟んでホットドックで手軽にランチする光景は日常的にみかけました。グリル用のソーセージはコロナの影響により24%も売り上げがのびたのだそう。一年に一度、世相を反映するアイテムが選ばれる「クリスマスプレゼント・オブ・ザ・イヤー」でも、コロナ初年度、アウトドア用野外調理器であるStormkökが選ばれました。
スウェーデンではコーヒーは日常的に愛される飲み物ですが、アウトドアフィーカのトレンドにより自然の中でコーヒーを沸かす道具も人気で、コーヒーを煮出す時に使うケトルは入手困難な状態が続いていたのだそう。アウトドアでのクッキングを提唱するエレ・ニキシュコヴァさんがお話してくれました。「自然の中でコーヒーを入れるには、まず森の中で焚火出来る場所をみつけ、枝を集め、火を起こす。ただコーヒーを飲むだけではなくて、一つ一つのプロセス自体を楽しむことが出来るのが魅力ですね。シンプルだけれども、友人たちと豊かな時間を過ごすことが出来るんです」

2021年はアウトドアライフの年とされ、環境保護庁の支援により「Luften är fri(直訳するとthe air is for everyone/空気はみんなのもの)」というプロジェクトのもと、様々な屋外イベントも開催されました。コロナ禍によりブームとなったこのアウトドアの動向は、世界が落ち着いた後どうなっていくのか、注目していきたいと思います。
写真で紹介したエレ・ニキシュコヴァさんのインスタグラムアカウント
https://www.instagram.com/ellesutemat/?hl=ja

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by Sweden House
人と環境にやさしい住まい「スウェーデンハウス」。高い住宅性能を備えているからこそ叶えられる、快適で豊かな暮らしをご提供しています。

スウェーデンハウス公式サイト

明知直子
千葉大学教育学部卒業後、IDÈEにて家具販売とインテリアコーディネートに携わる。2007年にスウェーデン北極圏の街キルナへ留学。その後ストックホルムで写真を学び、現在はストックホルム郊外の群島アーキペラゴ在住。書籍や雑誌記事の執筆·撮影、日本とスウェーデンに関わるプロジェクトや企画のコーディネートを生業とする。