コラム from Sweden
北欧の暮らし
ハウスメーカー【スウェーデンハウス】がお届けする、
時季折々の北欧のコラム。
ひと昔前、日本では「花の金曜日(花金)」という言葉がありました。今では知らない世代も増えてきて、すっかり死語となってしまいましたね。
金曜日の夜は飲み会というイメージのある日本と少し違い、スウェーデンではリラックスして過ごす「Fredagsmys(フレーダースミィース)」が定着しています。
fredag(フレーダーグ)=金曜日、mys(ミィース)=mysig(ミューシグ)心地の良いという意味の名詞で、家族や友人と、まったりとした時間を過ごすことをいいます。
ストレスの発散には色々な方法がありますが、「Fredagsmys」もそのひとつ。
身近な人とくつろいで過ごすことで、オキシトシンという幸せホルモンが作られ、ストレスを緩和してくれると言われています。
スウェーデンでは金曜日になると、多くの人が普段より早い3時くらいには仕事を切り上げて帰宅します。そして家族で、時には友人を招いて少し手の込んだ夕食をつくり、ゆっくりと夜遅くまで会話やホームシアターを楽しみます。
子どもたちも、夕食後にポップコーンやポテトチップスをつまみながら、映画を観て夜更かしできる特別な時間は、楽しくて仕方がありません。
「Fredagsmys」という単語は、2006年にスウェーデン語の辞書に加えられた比較的新しい言葉です。
2009年に、ポテトチップスのメーカーOLW社が打ち出したCMが大ヒットしたことがきっかけで、それ以来金曜日の夜は、家でポテトチップスを食べながらホームシアターを楽しむというイメージがすっかり定着しました。
今では「Fredagsmys」は週末の儀式ともいえる存在になっています。
最近、若い世代の間では、「Fredagsmys」にメキシコ料理のタコスを食べるのが流行っていて、日本のIKEAレストランでも「まったり金曜日のメニュー」としてタコスが加わったようです。
はてさて金曜日のタコスは、日本でも普及するでしょうか?
外食するのにも戸惑いがちな今、金曜日の夜は家族でゆっくりと「Fredagsmys」を真似てみるのもいいですね!
-2009年にOLW社が打ち出した「Fredagsmys」のCM
https://youtu.be/x1d8RX2Pki8
-2011年バージョンのCM
https://youtu.be/CHgWk0vv3-s
-2015年バージョンのCM
https://youtu.be/cbajpMJqIM4
-「Fredagsmys」を紹介する動画
https://youtu.be/AFj0QGwPqRc
-イギリスの北欧食料品を扱うサイトのコラムでも紹介されている
https://www.scandikitchen.co.uk/how-to-fredagsmys-fredagskos-like-a-scandi/
-Tryswedishのキャンペーン
http://www.tryswedish.com/product/orkla-confectionery-snacks-sverige/
ラジオが普及した1920年代、スウェーデンでは、ラジオを聴きながらキッチンのテーブルでフィーカを楽しんでいました。テレビが普及する1950年代後半になると、フィーカをする場所はキッチンのテーブルから居間のソファへと移り、それに伴い爆発的に売れたのがコーヒーを保温するポット「TV-kanna(テーヴェーカンナ)」です。
ちょうどカラフルなプラスチック製品が世にあふれた時代でもあり、有名デザイナーがこぞってプラスチックを使用したデザインを手がけました。中でもアイコンとなったのはステンレス製のポットの周りをプラスチックの紐で編んだ網で覆ったデザインで、コンディションが良い状態のものは、今も蚤の市で人気の衰えない商品です
「TV-kanna」はその名前から当然、テレビを見ながらフィーカするための便利なコーヒーポットだと誰もが信じ、私自身もスウェーデン人からそう教わりました。ところが調べてみると、実はこのネーミングには裏話があったのです。
当時、保温ポットを製造していたメーカーTermo Verkan (テルモヴェルケン)株式会社が、社名の頭文字をとって、「Te-Ve-kanna」と命名し売り出したものの、「Te-Ve(テーヴェー)」 は発音が同じ「TV(テレビ)」と捉えられ、国民に浸透したそうです。
それに関してちょっとした逸話も残っています。
当時は保温用ポットがあまり普及していなかったせいか、「TV-kanna」をそのまま電気コンロの上で温めた為、プラスチックの網の部分が溶けてしまい返品された、というトラブルが珍しくなかったとか。
ちなみに、現在の保温用ポットは「kaffetermos(カッフェテルモス)」とよばれ、当時のものとは区別されています。
「TV-kanna」と同時期に、コーヒーカップとお菓子を一緒にのせる少し大きめのソーサーがついた「TV-kopp(テーヴェー・コップ)」も流行しましたが、テレビが特別なものでなくなった現在は姿を消してしまい、今はマグカップでコーヒーを飲むことが一般的になっています。
スウェーデン語termos(テルモス)=英語thermos(サーモス)
秋から冬にかけて家で過ごす時間が長いスウェーデンでは、手工芸が盛んに行われてきた歴史があります。
スウェーデンの南西部に位置するゴットランド島は、厳しい北欧の気候の中で育つ羊特有の、柔らかく艶のある上質な羊毛の産地として有名。その羊毛で紡がれた毛糸は「ゴットランドウール」というブランド名で、世界各地で販売されています。上質な素材があったからこそ、編み物は古くから伝わる伝統工芸のひとつとして現在も受け継がれ、愛好家も後を立ちません。
編み物はイタリアで始まったと言われ、大きく分けて「stickning(スティックニング)/棒針編み」と、「virkning(ヴィルクニング)/かぎ針編み」がありますが、どちらも中世後期になるまでスウェーデンには伝わってきませんでした。
しかし、それまでスウェーデン国内に編み物がなかったわけではありません。イギリスやアイスランド、デンマークで発見されたバイキング時代の靴下や手袋はなんと900年代に作られたもので、「nålbindning(ノールビンドニング)」という独自の方法で作られていたことがわかりました。この手法はエジプトや中国、トルコ等でも行われていたようですが、編み物の歴史が1000年以上もあるとは驚きですね!
「nålbindning」とはnål(針)で束ねていくという意味で、研磨した木か動物の骨で作った短い棒に穴を空けた針に、毛糸を通して編んでいくという独特な方法です。
棒針編みに比べ時間がかかりますが、目が詰んでいて保温性に富み伸縮性があるため、手袋や靴下に適しているそうです。
この手法は今もなお、愛好家の間で大切に守り続けられています。