第65回
スウェーデンの老舗ブランド、 スヴェンスクト・テン①
スウェーデンデザインとして世界的に有名なのはイケアやH&Mですが、スウェーデン人に聞いた場合に、名前が挙がるのは1924年創業のテキスタイルブランド、「スヴェンスクト・テン/Svenskt Tenn」ではないでしょうか。スヴェンスクトはスウェーデン、テンは主にスズをつかった合金のピューターを意味し、もともとはピューターの作品を販売するお店が発祥です。現在では、王室御用達の高品質な品揃えのインテリアショップとして広く国民に愛されています。ストックホルム本店のみが実店舗で、店舗拡大はしていません。主なデザインはオーストリア出身の建築家であるヨセフ・フランクによるもので、大胆な色使いの植物柄のテキスタイルが主流です。ユダヤ系であったヨセフは第二次世界大戦中に妻の故郷であるスウェーデンに移住し、スヴェンスクト・テンの創業者であるエストリード・エリクソンに才能を認められ、1940年代に数多くのスケッチを描きました。スヴェンスクト・テンはヨセフ・フランクのオリジナルスケッチを忠実に再現することにこだわり、サイズや色など変えることなく高品質のテキスタイルに仕上げています。住まいの居心地の良さを何よりも大切に考えるスウェーデン人にとって、 スヴェンスクト・テンのテキスタイルインテリアを使うのはステイタスです。ヨセフ・フランクのクラシックなデザインに近代のデザイナーが手を入れた洗練された高級家具を含め、多くの北欧の人々を魅了しています。写真:スヴェンスクト・テン店舗内(実店舗はストックホルム本店のみ)
スウェーデンの老舗ブランド、 スヴェンスクト・テン②
スヴェンスクト・テンの魅力は、何と言ってもヨセフ・フランクのエレガントで大胆な植物柄のテキスタイルです。圧倒されるような色使いを初めて見た時は、その自己主張の強さに戸惑いを覚えるほどでしたが、今ではすっかりその美しさに魅了されています。ここのテキスタイルを家に上手に取り入れられるようになれば、北欧インテリア上級者です。ストックホルム本店の広い店内の一部は展示会場になり、季節ごとにテーマを持った展示を行なっています。展示に使われる家具や小物もスヴェンスクト・テンのオリジナルがメインで、季節のテーブルセッティングや花の飾り方など、さまざまなインテリアのヒントを見つけることができます。スウェーデンでよく見られる花の生け方は、大きめの花瓶に花の茎のラインを生かした形で、店内のインテリア展示が生け方の参考になります。また、2018年には国外を含めた10人の若手テキスタイルデザイナーの学生を起用したコラボレーション企画が行われ、学生がヨセフ・フランクの伝統的なデザインからインスピレーションを得たパターンを描きました。そのうちの3つのデザインがテキスタイルとして制作され、うち2人は日本の多摩美術大学の学生です。学生たちのテキスタイルは今でもコレクションのひとつとして販売されています。写真:新しく発表されたグリーンを基調にしたテキスタイルに合わせたグリーントーンの夏らしいテーブルセッティング
mysig/あなたのミューシグを教えて下さい
ミューシグ/mysigとは、居心地のよい空間で気持ちが落ち着き、心からリラックスできることを表わすスウェーデン語の形容詞です。スウェーデン人と会話をしているととてもよく耳にする言葉ですが、居心地のいいシーンを目にしたり、ホッとするひとときだったり、そんな時に彼らはほとんど無意識にミューシグと発しているようです。スウェーデンの私立保育園を支援するSEFIFの代表を務め、2018年の日本・スウェーデン外交関係樹立150周年には、東京のスウェーデン大使館にてスウェーデンの保育事情セミナーを行なったエリザベス・トルバーンさんに、あなたのミューシグについて聞いてみました。「私のミューシグは、家族や友人と過ごす時間やお気に入りの場所です。数年前にストックホルム郊外に家を建て、アンティークとモダンを取り入れた私たち好みのインテリアに仕上げました。お気に入りの場所はキッチンとダイニングで、窓から見える自然豊かな景色を眺めるひとときもミューシグです」エリザベスさんにミューシグな写真をお願いしたら、毎日のように数枚ずつ届けてくれました。日々、自分が幸せだと感じるミューシグがあるのだとか。2018年は息子さんと、2019年はご主人と一緒に東京と京都を訪れ、それぞれにたくさんのミューシグを経験したそうです。ミューシグとは、自分にとって居心地がよく、幸せだなと感じる全てのひとときや場面のことなんですね。写真:キッチンから見えるダイニングと窓からの景色
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