コラム from Sweden
北欧の暮らし
ハウスメーカー【スウェーデンハウス】がお届けする、
時季折々の北欧のコラム。
北欧のデザインは、合理的な国民性がそのまま形になったようにシンプルで明解。
特に色を利用してメッセージを伝える技にはいつも関心してしまいます。
その代表が毎日食卓で目にする牛乳パック。
ストライプ模様の牛乳パックは、テキスタイルデザイン会社「10グルッペン」の創始者のひとりである、トム・ヘッドクウィストが1991年にアーラ社から依頼されデザインしたものです。ストライプを線の太さと色の違いでバリエーション展開した牛乳パックは、乳脂肪率の違いが一目で分かるようになっています。乳脂肪率の高い順から赤、緑、青、黄色という風に色分けし、線の太さも脂肪率が下がるにつれて細くなっています。子どもにお使いを頼む時も、「赤いストライプの牛乳ね!」の一言で伝わるデザインメッセージがそこには込められています。
2000年にロゴマークとパッケージデザインが少し変わりましたが、ストライプの模様はそのまま残されています。優れたデザインとはこのように時を超えて生き続けるものなのです。
北欧デザインが注目される今では、スウェーデンのグラフィックデザインが素晴らしいことも当然の事だととらえられますが、80年代に初めてスウェーデンを訪れた時、私はすでにそのクオリティの高さに脱帽していました。
当時のファッションは日本のほうが優位だと思っていたのですが、グラフィックデザインは日本で目にしたどんなパンフレットやポスターも足元には及ばないほど素敵にみえました。それがオシャレなブランドのお店だけでなく、普通のスーパーマーケットや郵便局でさえも、思わず収集してしまうほど素敵なデザインのリーフレットで溢れていたのですから。
日本の選挙ポスターは今でも候補者のお決まりポーズですが、スウェーデンでは「これが選挙ポスター?!」と思うほど斬新なデザインをみかけます。広告用のポスターでは、ビジュアルの美しさとアイデアに富んだデザインに常々関心させられ、よく見入ってしまいます。
生活の至るところに素晴らしいデザインが存在するという環境が、デザインセンスをみがきあげ、次世代のデザイナーを育てるのでしょう。
どこの国を旅行しても、スーパーマーケットを覗くのは楽しみの一つですね。
特にデザイン大国スウェーデンでは、棚に並んだパッケージを眺めているだけでもワクワクします。最近はスーパーのオリジナル商品も増え、ますます衝動買いに弾みがついてしまいます。パッケージに惹かれ買った商品は数えきれないほど…というのは、おそらく私だけではないでしょう。
若手デザイナーの作品は北欧らしい色合いとシンプルな形で表現され、日本でも人気を得ていますが、この北欧デザイン界にとって大切な人物の存在を忘れてはなりません。
それは1956年にマゼッティ社のロゴマークとして採用された、お馴染み「ココアアイズ」で一躍有名となったデザイナー「オーレ・エクセル」です。
彼のイラストはアルメダールス社を始め、北欧家具ブランドIKEAのテキスタイルにも使用され、今なお愛され続けています。
「優れたデザインは経済効果をもたらす」という彼のモットーは、現在も北欧デザインの真髄として引き継がれていることは間違いないでしょう。
「世界で一番長いギャラリー」と称されるストックホルムの地下鉄では、100ある駅のうち、90の駅に150名のアーティストによるアートが施され、全長はなんと110キロにも及びます。
いくつかの駅はダイナマイトで砕いた岩盤がそのまま壁になっており、ドキッとするような赤色や目の覚めるような青色でペイントされ、誰もが息を呑む不思議な洞窟のようになっています。また、駅の名前にちなんだイラストが描かれていたり、オブジェや彫刻が建っているところもあります。中心部にあるOdenplan(オーデンプラン)駅のホームにはギャラリーが設置されていて、定期的に展示物が変えられます。このように電車を待つ間にも、気軽にアートに触れる機会があるのです。スウェーデンではアートは特別なものではなく、みんなが身近に楽しめるものとして、昔から生活に浸透しています。
この地下鉄アートを巡るツアーは月に数日実施されているので、ストックホルムを訪問する機会がある方はぜひ参加してみてください。