コラム from Sweden
北欧の暮らし
ハウスメーカー【スウェーデンハウス】がお届けする、
時季折々の北欧のコラム。

いま、スウェーデンのインテリアで特に注目を集めているのが「壁紙」です。2025年秋に開催されたインテリアフェアFormexでは、65周年を記念して全長150メートルにもおよぶ壮大な壁紙ギャラリーが特別展示され、訪れた人々を魅了しました。壁紙は、単なる室内装飾にとどまりません。スウェーデンならではの紙やテキスタイルに根ざしたプリントアートの伝統を映し出す存在なのです。
その代表格が、100年以上の歴史を誇る「Boråstapeter(ボラスタペーター)」。テキスタイルの街ボロースを拠点に、世代を超えて受け継がれる豊かな表情と、時代に左右されないタイムレスな美を壁紙に込め続けています。人気コレクション「Icons(アイコンズ)」には、スティグ・リンドベリやヨブスといったスウェーデンを代表する巨匠たちのデザインが並びます。リンドベリの「Herbarium(ハーバリウム)」は、植物柄という普遍的なモチーフに独自のユーモアとエレガンスを融合させた傑作。ヨブスの「Rabarber(ルバーブ)」には、スウェーデンの庭でおなじみのルバーブやスミレといった野花が描かれ、今も家庭で愛され続ける温かみのあるクラシックなデザインです。

ボラスタペーターの壁紙、リンドベリの「ハーバリウム」
ボラスタペーターは2025年秋に、300年にわたる壁紙の歴史を旅するような新コレクション「Anno II」を発表しました。ロココのやわらかな色調、農家に息づいた民芸風のステンシル模様、アール・ヌーヴォーの繊細な花々、バロック様式の華やかな装飾など、それぞれが熟練職人の手でていねいに再現されています。「Skenninge(シェニングエ)」は1750年代に遡る最古級のデザイン。チューリップやバラ、ブドウといったバロックらしい植物の構図が特徴です。今でも残されているトゥルガルン城にゆかりのある壁紙は、19世紀末にグスタフ皇太子とヴィクトリア妃が大規模な改装を行った際の歴史を物語ります。「Kvarnholmen(クヴァルンホルメン)」は、19世紀のステンシル装飾画に由来する、繊細でノスタルジックな魅力を放つデザインです。
壁紙は、部屋の印象を変えてくれるだけでなく、暮らしそのものを心地よくアップデートしてくれます。家具を買い替えなくても、壁紙ひとつで空間が明るく広く感じられたり、落ち着いた雰囲気になったりと、思い通りのスタイルをつくり出せます。模様替えや気分転換を考えている方にとって、壁紙はもっとも手軽で効果的なインテリアアイテムなのです。